いきなり名前を呼ばれて、一瞬ビクっとする。

 この声は・・・。

 振り向くと、思ったとおりの人。


「仲谷くん」


 今、そっちに行こうと思ってたのにな。

 来てくれたんだ。

 ありがと。


 そう言おうとしてたのに、いきなり腕を引かれて強制的にプールから追放された。

 足をバタバタさせて少し反抗してみたけど、水がパチャパチャと跳ねるだけで効果ナシ。

 私の抵抗は無意味と終わった。


 向井くんはポケーっとした顔で、少し唖然とした様子。


「なな、仲谷くん」

「ちょっと黙ってて」

 強引に腕を引かれて、最終的に男子更衣室に連れて行かれた。

 なぜに男子更衣室・・・。

 女子の私がここにいると、少し変態みたいじゃん。


 男子更衣室に座らされて、仲谷くんがしゃがみこんだ。


「な、仲谷くん」

「何だよ・・・」

 ここに連れてきた意味も聞きたいけど。

 
 それより、言わなきゃいけないことがあるんだ。


 ちょっとした、わがままを。



「あのね・・・」

 ノドが少しつまったように苦しい。

 あの、仲谷くんに告白した時みたいな衝動にやられてる。


 でも、言わなくちゃ。


「その、他の子と・・・仲良くしちゃヤダよぉ・・・」