少し違和感があった。
5分くらいしかつないでないのに。
浩貴の手にすっかり慣れてしまったせいだ。
手持ち無沙汰の手は、ぶらぶらと揺れる。
「はい、これ麻友の分のパス。これで乗り物自由に乗れるよ」
「ありがと由梨」
カードくらいの大きさのパスを持つと、ポケットにしまう。
まず何から乗ろうか。
・・・それより、手持ち無沙汰な手が少し気になる。
空気に触れるその手は、浩貴の手を待っている。
なんだか甘えることに恥ずかしさを覚えて、また甘えるのはやめた。
ぶらぶらとさせていた手を持ち上げて、こぼれ落ちていた髪を耳にかけた。
耳にかけたときに、ピアスに指が軽くぶつかった。
「で、どこから行く?」
とりあえず聞いてみる。
でも、聞いてもきっと意味はない。
「オレ、ジェットコースター」
「オレ、ジャイアントハンマー」
絶叫系で固めてきたのは男子2人。
どうせ由梨も絶叫系だろうし・・・
「私、観覧車」
「「「え!?」」」
3人の声と心がそろった瞬間だ。
「何、私が観覧車は意外?」
ほっぺをふくらまして、怒ったような態度をしてみせる。
「いやー・・・由梨は、絶叫系好きだからさ・・・」
「そうそう。もろ絶叫だからー、でも、意外ってわけでもなくてさ」
「そうそう、松竹が観覧車とか、意外そーに見えて実は意外じゃないけど、やっぱ意外って感じで・・・」
「意外なんでしょーが」
はい、ごもっともです。

