それから少しして、電車が来た。
電車に乗り込むと、2人分くらいの座るスペースを発見。
あとは埋まっている。
休日だからだ。
「浩貴、あそこ空いてる。座って」
「お前が座れ」
「いい、ってば」
「あのさぁ・・・オレらが立つから、仲谷と大木が座れば?」
「いいよ、私は。立つ」
「・・・・・・じゃぁ、オレが座ろう。松竹も座れ。麻友も座れ」
「え?」
浩貴はそう言うと、空いたスペースに腰を下ろす。
そして、由梨に手招きをする。
由梨も浩貴の横に座った。
もう座るスペースなどはない、だけど・・・。
浩貴はニコっと笑った。
「おいで、麻友」
浩貴は自分の膝のあたりをぽんぽんと叩くと、私に視線で促した。
「む、むりだよ・・・」
人が多いの。
恥ずかしいし、無理無理無理無理。
私はブンブンと首を横に振った。
「麻友。お・い・で」
浩貴はそう言って舌で唇をペロっと舐めた。
そんな仕草すんなっての・・・。
あほか。
私は視線でじとっと睨みつける。
私は、つり革にはつかまらず、ドアの近くの手すりに向井くんと一緒につかまっていた。
つり革は、身長がギリギリなので腕が痛い。
なので、浩貴の近くのつり革につかまるのもダメなのだ。
浩貴のそばに行きたい願望はあるが、膝に乗るのは丁重にお断りさせていただこう。

