ベッドに置いたぬいぐるみを撫でると、私は部屋を出た。
駅まで歩いて5分で着く。
駅から近く、スーパーも遠くない。
それが私の家のいいとこだ。
いつも学校に行く時、電車を使っているから、家から駅までの道はもう歩き慣れたというか、景色も見慣れた。
あそこは誰の家だとか。
あそこの家の人は犬を飼ってるとか。
ご近所づきあいも悪くない。
駅までの道を、いつものように歩いていくと駅が見えてきた。
日曜日だから人がけっこういた。
入口で待機していると、こっちへ走ってくる人影。
「大木。おはよ」
「向井くん、おはよ」
意外にオシャレな格好で、少しびっくりした。
浩貴もかなりオシャレだが、同じくらい。
「向井くん・・・オシャレだね」
「そうか? 普段着ですよ?」
そう言って少し笑ってみせる。
・・・向井くんって意外にカッコイイんだなぁ。
失礼だけど。
前の時はどうもカッコよく見えなかったもので・・・。
「あ、大木」
「わっ・・・」
グイっと腕を引かれて、いきなりのことに向井くんによりかかる体制になってしまった。
「あ・・・ゴメン。人がぶつかりそうだったから引っ張ったんだけど・・・」
「あ、ありがと」
そう言ってすぐ離れた。
こんなとこを浩貴に見られていたら、この人は生きてないんだろうな。
今のは不可抗力であって。
この人は由梨の彼氏である。
由梨はなかなかいい人を捕まえたらしい。

