「痕つけないでって、言ったでしょうが」

「そこなら髪で隠れるだろ、ギリ」

 私の首元を、浩貴は指でピシっとはねた。

 少し顔を歪める。

 絆創膏で隠さないとかな・・・。


 でも、そしたらけっきょくバレるわけで。


「これで余計に男よけになったな」

 これ以上さけてどうする。

 もう、仲谷浩貴という人物が彼氏な時点で、十分な男よけとなっている。

 
 キスマークがついた首をさらしても、今と状況は変わるわけじゃない。

 私は諦めたように、絆創膏を貼るのもやめた。


「あと6限だけだし、いいじゃん」

「別にいいよ。もう諦めてるし」

 ふぅとため息をつく。

 さっきつけられたばっかりだから、少しじんじんしてる。

 
「・・・なんかやっぱ冷たいなー」

「そんなことないけど・・・」

「前はもっと好き好きオーラが出てて・・・。おかしいな、この前の楠木事件にて愛を確かめ合ったはずなんだけど・・・」

「あぁいうのは本当に勘弁してください。・・・・・・冷たくない。本当に本当に好きだから」


 そう言うと、勇気を振り絞って自分からキスしてやった。

 奴は驚いた顔をする。


 してやったり、って顔をして浩貴を見てみる。


 ・・・勝った(^-^)V



 違う、勝ったのは奴だった。


 キスが終わった瞬間、私の体を引き寄せてキスをする。

 油断してた。完璧に。


「あ、・・・」


 首にはまた痕が増えた。