「麻友。怒っていいんだよ? 彼女なんだから、その権利くらいあるでしょ?」

「・・・・・・」

「それに何より・・・イヤじゃないの?」

「っ・・・・・・い、やだ」

 すっごくいやだよ。

 
 周りに近づかないでほしいよ。


 だって、私の彼氏だもん。

 好きな人だもん。


「なら、いいじゃん。怒っちゃえば。嫉妬するのも彼女の特権。」

「そう・・・かもね」

 うぅ・・・泣きそうだ。

 親友にすごいこと言われた。

 
 簡単そうで、気付かない気持ちを、由梨に気付かせてもらった。

 やっぱ、親友って偉大だよね。

 
 仲谷くんの側に行こう。

 そう決心した瞬間。


「あ、大木?」

「え、はい」

 誰かに名前を呼ばれた。

 返事をして呼ばれた方を向くと、同じクラスの男子の『向井真』くんだった。

 特別仲がいいってわけでもないけど、話しかけられたらしゃべる。その程度。


「向井くん、何?」

「いや、ヒマだったらさ、一緒に泳がない?」

 何か、学校のプールなのに、海でナンパされた気分。

 私はクスっと笑った。


 別に向井くんが、嫌いってわけじゃないんだけど、今からちょっと仲谷くんのとこ行くんだよね・・・。


「あ、ゴメン・・・ちょっと、これから・・・」

「麻友」