「あ、ありがとうございます」

 目の前には滝沢さん。

 滝沢さんの手にはピンクのマフラー。

 隣には浩貴。


「やっぱり麻友ちゃんのだったんだ。はい、どうぞ」

 滝沢さんはそう言うと、マフラーを私の手に渡すのではなく、丁寧に首に巻いてくれた。

 意外な距離の近さにはご遠慮したかった気分でもある。


「オレの彼女なんでー。半径50センチ以内にはご遠慮しますわー」

 と言うと、浩貴は滝沢さんの顔をグイっと押しのけた。


「ヤキモチ焼きだねー麻友ちゃんの彼氏」

「あ、はい」

 オマケに束縛野郎でもあるのだ。


「余計なお世話っす」

「そんなんじゃ逃げられるよー?」

「大丈夫っす」

 笑顔なのだがオーラが黒い。

 私はそんな狭間で微妙な気分でいた。


 ・・・なんなんだろうかこの2人は。


「じゃぁ、もう行くんで」

「あ、滝沢さん。また来ますね」

「うん。またね」


 私は浩貴に引っ張られるように、カフェから遠ざかっていく。

「ね、浩貴。また来ようね」

「気にくわねぇが・・・」

「えぇー・・・」

「でも、コーヒーはまぁうまかったな・・・」