「あ、浩貴」

 見れば、いつの間に帰ってきたのか浩貴が立っていた。


「副会長は?」

「・・・お手洗いに用事だと」

「ふーん。そうなんだ。あ、私帰るね」

「・・・・・・」

「なんで無言なの、帰るよー?」


 コーヒーがこぼれたとこを拭いた。

 それに気づいているだろうか?


 テーブルにあった茶色い水たまりは、いまやキレイに拭き取られている。


 そのことに感謝の一言でも欲しいものだけど。



 ・・・コイツにそれを求めてもなぁ。

 なんて少し諦め混じりのため息をする。



 カフェの中は少し人が少なくなっていた。


 そろそろ帰りどき。


「じゃぁね」

 カバンを肩にかけると、お会計をしにカウンターへ行く。

 ・・・ポイントカードあったかなー。

 あれためるとケーキ1つもらえるんだよねー。


 財布を取り出そうとカバンを開こうとすると、腕を浩貴につかまれた。

 力強く。

 
 あやうくバランスを崩してこけそうだった。


「ちょ、危なっ・・・」

 私より身長が高い浩貴を見上げると、なぜか怒った顔で見下ろされていた。


「・・・なんで不機嫌なの」


 むしろ、零れたコーヒーを拭いたことに感謝してほしいくらいだ。


 私には浩貴の態度が不満だった。


 あと、疑問。