こんなふうに迷うくらいなら、つぐみと出会わなければ良かった。

 ・・・なんてそんなこと考えたってどうにもならないのにな。逃げようとするなんて俺らしくもない。

 前髪掻きあげ、そのまま下を向いた。

 ぼーっと床を見た。何も考えたくないのに、頭の中を色々なものが駆け巡っていた。

『もうっ、お酒入ってるからって、そんなところに座り込まないでよ』

『一緒に布団行こう?』

 つぐみの声が、姿が、思い出が、この部屋には多すぎる。

 どこに居ても、つぐみの事を思い出してしまう。

「・・・勘弁してくれ」