トランキライザー


 彼女は黙ったまま、扉の前から体をのけた。

「それ以外も連絡する。私別れたくないから」

「もう、その話はいいって。いい加減にして?」

「・・・わかった。ごめんなさい」

 ふわふわの髪。この体を抱きしめたい衝動に駆られた。でも、そんなことは出来ない。

「もう俺のことは放っておいて、頼むから」

 つぐみは何も答えず、荷物を握り締めて帰っていった。

「ちっ、何なんだよ」

 苛立ちながら、部屋の中に入った。

 俺の気持ちが宙ぶらりんになっているから、無理にでもつぐみを突き放しているのに、こんなにも苛立つなんて。