トランキライザー


 つぐみ以外にこうやってしたのは、いつぶりだろう。

 少し胸が弾んでいた。別に、悪いことは何一つしてないんだから、なんだってありだろう。

「ねぇ、歩くのー?」

「歩くよ。すぐ着くから」

「ふーん。足痛いなぁ」

「タクシー乗るほどの距離じゃないから我慢して?」

「うーん」

 自分で可愛いと思っているであろう顔をしてきた。正直その困り顔を可愛いとは思えない。

「じゃあ、戻る?」

「嫌っ。行こう」

 ふふん。ちょろい。