トランキライザー


 口を尖らし、可愛い声で俺にそう言ったつぐみ。これは本音だったんだろうか。

「あー」

 思い出したら思い出すだけ頭がグチャグチャになってきた。

 前髪をくしゃくしゃっとした。

「なんだってそんな悩んでるんだ?」

 店長は携帯を見ながら俺に問いかけてきた。

「うーん。なんか昔のこと思い出して」

「ははっ、女々しいな。別れたならとっとと忘れることだな」

 店長はあっけらかんと言い放った。

「俺、店長みたいな性格に生まれたかったよ」

「ははっ、ならば女に生まれたら良かったな」

「・・・いや、店長みたいな女は稀だと思うよ」

「そうか?」