トランキライザー


 つぐみはそっと両手を離した。

「・・・ごめんなさい」

「もういいから。今何を言われても俺の気持ちは変わらない」

 つぐみから一歩下がった。今突き放さないと、俺はまた許してしまう。

「・・・じゃあ、元気でな。荷物、どうするか決めたら連絡してくれ」

 そう言って、つぐみに背を向けて歩き始めた。

「圭斗ぉ」

 つぐみの泣き声。

 でも、振り返らない。

 もう忘れるんだ。もう無理なんだから。

 今まで張っていた糸が切れたようだった。