トランキライザー


 何も言わないつぐみに、そっと目を向けた。

 彼女は立ち尽くしたまま、涙が頬を伝っていた。

「・・・つぐ・・・、っ」

 名前を呼び、近付こうとしたけれど、やめた。

 ここで、言うのを辞めたら、また繰り返す。もう嫌だ。

「返事をしろよ。なぁ」

 ぎゅっと手に力を入れた。今は優しい言葉なんて掛けない。

「・・・ごめんなさい」

 小さな声でつぐみは言った。

「何が?何に対してごめんなさいなんだよ。逃げるなよ」

 謝ったつぐみをさらに俺は追い込もうとした。