自分の料理を笑顔で食べてくれる人なんて、島原屋にもいっぱい居たはず。 「おいしい」っていっぱい言われたことだってあったはず。 今日の言葉もその中の一つ。 なのに、こんなに嬉しいと感じるのはきっと久しぶりだったから。 誰かに自分の料理を食べてもらえるのが。 褒めてもらえるのが。 久しぶりだったから。 ただ、それだけのこと。 咲希は舞い上がりそうになる気持ちを抑え、まだ盛り上がる幹部たちに背を向けた。