「あ、そうだ。また甘味屋にでも寄って行く?」
後ろからの声が直接届いていないことから、きっと左手にあった甘味屋を見ながら言っているだろう。
咲希は歩調を変えないまま「早く帰らなきゃいけないんじゃないんですか?」と少し叱ったような言い振りをした。
「わーお。良く分かってるねー」
「試したんですか!?」
「まさかっ」と勢いよく振り向き、足を止める。
「うーん。ちょっとね」
「私がほいほい着いて行くと思いますか?ありえません」
自問自答を声に出し、沖田へとしけた目をよこす。
「ははっ君やっぱ面白いや」
いつものように顎を引いて笑う沖田に、咲希は口を尖らせ、隣を歩いた。