「な、何をするっ」





口ではそう言うも、何故か拒むことが出来ない。





「はっ離せ!私は同情なんかされたくないっ!」







言い終わり、辺りの異様な静けさに気がついた。






物音一つないこの世界に、まるで二人きりのような錯覚にさえ陥ってしまう。






しだいに赤くなる咲希の頬。






「離せよ馬鹿野郎・・・」







小さく呟いた咲希の目は悲しく下を向いていたものの、涙の跡で光っていた。







それは、満月の夜だった。