「さ、斎藤さんっ!!」



あれから一言も口を開かず、もくもくと足を進める斎藤に、いつの間にか涙も止まり、息切れしていた咲希は、かすれた声でそう呼んだ。




我に返ったのか、急に立ち止まって勢いよく振り向いた。



「ど、どこ行くんですか・・・・?」




連鎖のように咲希も斎藤の急ブレーキに驚き、見上げた形で斎藤を見つめる。




「えっと・・・特には決めていない」



「は?」



急に冷静な咲希の声が挟む。



「あの、意味わかんないんですけど」




苦笑いの「笑い」すら表出できない咲希に、斎藤は更に咲希の目を点にさせた。



「駆け落ちだ」



「・・・・・・・・・・・は?」




咲希の冷たい目。



それに対抗して、斎藤はしてやったりな顔をする。



とはいえ、いつもの無表情と大して変わりはしないのだが。