それは、土方にとっては何の前兆もなくやってきた。



襖を全開にし、四季漂う中庭を眺めながら書類をまとめてた時だった。


突然、黒髪の長いポニーテールが視界を横切った。



そして、



「土方さん・・・・」



とか細い声が呼んだ。



「何だ、島原か」



珍しい訪客に思わずそんな言葉を口にした。



だが咲希は何も悪い気など顔に出さず、「お話が・・・」と早速本題を切り出した。



羽織を袖から外し、綺麗に畳んで右腕に収められていることに、察しのよい土方は見る間に嫌な兆しを感じた。



咲希を部屋に入れると、襖で隙間無く差固めた。



ゆっくりとたっぷり時間を使って土方の前に正座する咲希に視線を投げる。



そして羽織を一歩前に置くと、一呼吸の間を空け、話し出した。



「突然の話で申し訳ないのですが、私、新選組をやめさせていただきます」



あまりの率直な言い様に土方も言葉を返すのに苦労した。



「・・・・理由はあるのか」



いつにも増して低く、力強い声に恐れを抱くが、唇を噛み締め、全てを吐き出した。