咲希の言葉に山崎は驚いた。



自分は、咲希を引き止めている。



新選組を復讐しにやってきて、剣の腕もそれほどない、それに加えて女である咲希を・・・・



山崎は身を引いて、「すみません」と呟くように言った。



「いえ、謝るのはこちらのほうです・・・すみませんでした。今までありがとうございました」



言うと咲希は一人資料室を出た。



薄暗い廊下が咲希の姿を隠すように、空間を作る。



首が落ちてしまうのではないかと疑ってしまう程、下を向いた頭。



咲希はそのまま光の差す方へと進んだ。



そして運が良いのや悪いのや、沖田と鉢合わせした。



もちろん咲希の気持ちなど知らず、何も考えずに話しかけるわけで。



「あれ?咲希ちゃん、どっから来たの?そっち資料室だよね。調べモノ?」



相変わらず嫌味な言い方。



だが、「はい・・・」という小さく生気の感じられない返事に、『咲希ちゃん』という呼び方で驚かそうとした沖田だが、逆に目を剥いた。



そして、ツッコミも何も入れる間もなく通り過ぎていく。




「・・・・・・つまんない反応。ていうか・・・泣いた?」




一人、背中を見つめて呟いた。