恋のはじめ




静かな空間で2人の心音が重なる。



「さっ・・いとうさん・・・」



咲希の声で我に帰ったのか、焦るように咲希から手を離した。




「す、すまない」



ぎこちない斎藤の声と共に体が離れ、目が合う。



だが、すぐにお互いどちらともなく逸らす。



「あ・・・あの・・・・」



あまりの気まずさに、全力でその場を去りたい咲希だが、タイミングが掴めない。



「とにかくだなっ」



ゴホンと一つ咳払いをした斎藤が目線を右上へと放り投げ、言葉を出した。



「新選組に居る以上、危険なことが多い。一瞬でも油断したら死ぬ。そんな場だ」




「・・・・・・はい」




しゅんと下を向き、「出て行け」と言われる覚悟で斎藤の声を受け止める。




だが、またもや予想外の言葉が出た。




「自分の身は自分で守る。そのくらいの力は付けろ」




「・・・・・・・・・・・・・え?」