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「誰か探してた?」
わたしの足元の、ふたつのカバンを指さした先生。

「あっ!」
頭の片隅に追いやったままの華乃の顔がポンッと浮かんだ。

ごめん華乃。すっかり忘れてた。

「二階堂さんを、」
慌ててふたつのカバンを肩に担ぎ、先生にペコリと頭を下げた。


「うん。さよなら。気をつけて」


「………」

背中を向けたわたしにかけられた言葉。

その言葉を聞いて足を止めた。


緊張でカラカラになった喉をゴクリと鳴らす。


くるりと体の向きを変えると、ヨイショと立ち上がった先生と目が合った。

わたしは、どうした、と首を傾げた先生に、半ば強引にオレンジジュースを渡した。


飲まずに持っておいてよかった。


とつぜん渡された、少しぬるくなってしまったオレンジジュースに視線を落とした先生。

「……っま、…間違えて買ってしまったので!
前、もらっちゃったし。だから、どうぞ!」

一気にそう言うと、またペコリと頭を下げて走って逃げた。

逃げるわたしに、ありがとう、って言った先生が、あの日のことを覚えているかはわからない。

でも。

わたしの頭の中には、はっきりと残っていた。