「やっぱりないかー。……って。あーっ!」
華乃が何かに気づき、パタパタと走り出した。
「先生!倉田せんせーっ!それ、あたしの!あたしのですー!」
挙げた右手をブンブンと大きく振りながら、そう叫んでいる。
「………ぁ、」
華乃の目指す先には、メガホンをふたつ持った先生の姿。
ドクン、と心臓が跳ねた。
……どうしよう。
血の気が引いていく感覚の中、先生の持つメガホンに視線を向けた。
拾ってくれた人が先生だったなんて。
『本人に見られたらどうしよう。これって、ラッキーって思うべき?』
能天気な華乃の言葉。
ラッキーなわけないじゃない。
ラッキーなんかじゃ。
握りしめていた手から力が抜けていく。
膝からくずれ落ちそうなのを堪え、華乃の隣を目指した。
ゴクリとのどが鳴る。
どうか、気づいていませんように。
「あんなところに置きっぱなしにするなよ」
メガホンで華乃の頭をコツンと叩いた先生。
「ちょっと、いろいろありまして。ごめんなさい」
先生からメガホンを受け取った華乃は肩をすくめ、ぺろっと舌を出した。



