先生の反応が気になって、先生の右手に置いていた視線をゆっくりと移動させる。
画鋲をさす体勢のまま、先生は眉尻を下げてわたしを見ていた。
「そんなこと、」
そう言ったあと、ほんの少しだけ考え込んだ様子の先生は、
「悩ませてたとしたら、逆に申し訳ないことしちゃったな」
と続けた。
首を横に小さく振っただけのわたし。
無意識のうちにスカートの裾を握りしめていた手には、うっすらと汗が滲んでいる。
のどは、こんなにもカラカラに渇いているのに。
「これでよし」
先生は満足そうに掲示物を眺めたあと、ゴツゴツしたシルバーの腕時計に視線を落とした。
「ほら。そろそろ次の授業が始まる」
ありがとうの言葉も、すみませんって言葉も口にしたのに、スッキリしない。
逆に苦しさが増してしまったみたい。
先生は、わたしの苦しみなんて想像もつかないのだろう。
もし想像がついたのなら。
「ごめんな」って。
わたしの頭に手を置いて謝ったりしない。