「あ。本当だ」
「……………」
「篠田が歩いてるのが見えたから、」
慌てて出てきてくれた。
そう受け止めてしまって……いいのだろうか。
そう思ったら、なんだか胸の奥が締めつけられたように苦しくなった。
「あ、……あの、」
「篠田は、電車通学?」
なにか言葉を発しなくては、と思ったのと同時に先生が口を開いた。
「……え?」
「今から見回りに行くところだから、ついでに駅まで送ってやる。
ちょっと待ってもらうけど。あ、日陰に入って待ってろよ」
「あ、…あのっ、」
引き止めようと伸ばしかけた手は、なんの意味も持たなかった。
白いソックスに、黒色のサンダルを履いた先生は、パタパタと音を立てて校舎の中へと消えてしまった。
「うそ、……でしょ」



