「大丈夫か?」
ぼんやりと耳に届いた監視役の先生の問いかけに、わたしはきちんと答えられたのだろうか。
スカートのポケットからハンカチを取り出し、口元を覆う。
先生が、他にも何か言葉を掛けてくれたような気がしたけれど、返事をする余裕なんてもちろんなかった。
トイレ……。ううん、まずは……。
保健室。
保健室で………。
ふらふらとした足取りで廊下に出ようとしたわたしの足元に、突如、白い物体が姿を現した。
………え?
「保健室まで連れていく」
「………え、」
「途中で倒れたら危ないから。ほら」
「………」
白い、シャツ。
先生の、白いシャツ。
わたしに背を向けてしゃがむ、先生の姿。
「あ……」
意識は朦朧としているけれど、恥ずかしいという感情はかろうじて残っていた。
「あの、……」
「ほら、早く」
ためらうわたしの前で、先生の声が優しく響いた。



