視線がぶつかると、夏哉は逸らすように俯いた。 「大したことじゃないけど。──もう、進路って決めたのか?」 進路。中学三年生ともなれば、必ずぶつかる壁だ。 「ああ、進路か。たぶん……決まってるかな」 曖昧に答えたのは、まだ夏哉にも小夜子にも、東京へ帰ることを告げずにいたからだろう。 本当は選択肢など一つしかない。 中学を出たら東京へ帰って、父と暮らすのだ。