* 紅い唇、粘膜の上で林檎飴が溶ける。 「そろそろ、舞が始まるね」 小夜子は唇から飴を離すと、そう告げた。 人の波は、いつの間にか薄れていた。皆、境内へ向かったのだろう。 三人もまた、境内へ足を進めた。 響く、太鼓の音。 鼓膜が痺れるような感覚に高揚する。 どん、どん、どん。 音が激しくなるにつれて、境内の人混みが揺れる。 大人達の間に割り込んで、三人は舞台の正面に陣取った。 どん。 一層大きく太鼓が響くと、同時に周りが歓声をあげた。