今はただ、純粋に小夜子、夏哉と共に祭りの空気を楽しみたかった。
村だから珍しい決まり事もあるのだろう……そう、納得させた。
ただの中学生がこんなことを気にすることも、変な話かもしれない。
ただ、そういった事に敏感になるほど、幼い真郷が負ったトラウマは酷いのだ。
非力な子供ではなく、早く力を持った大人になりたい……その思いが、真郷をここまで大人びさせていた。
「……あ!」
夏哉が指差した先には射的があった。
「ナツ、射的上手なんだよ」
小夜子が嬉しそうに零す。
「真郷も射的やりたいだろ?な?」
ぐい、と手を引かれ、夏哉に連れられるかたちで屋台の前へ立った。
「一回200円だよ。やるかいボウズ?」
「やるやる!」
夏哉はさっそく挑戦するようだ。
「なに狙うの?」
「二等のエアーガンに決まってるだろー」
狙いを定めながら、真郷に答える。
真郷は相槌を打つと、夏哉の様子をじっと見ていた。



