「真郷って天然だよなー」
呆れたような物言いの夏哉に、真郷は首を傾げる。
「そう?」
「気付いてないならそうなんだろ。──それより祭り!出店!早く行こうぜ」
夏哉にとっての優先事項はそちららしい。
人混みに向かって突き進む彼を、二人は追った。
真郷にとって、祭りは暗くなってから行う、というイメージが強かった。
しかし、現に今は午後の三時。
日の長い夏の時期、この時刻は当たり前のように明るい。
「夜店とかもあるの?」
真郷の問いに、小夜子は首を振った。
「ううん。御夜叉祭りは、夜までには出店を終わらせるの。六時になったら巫女さんの舞があって、それが済んだら必ず雨が降るから」
「必ず……?」
「不思議だよね。それでね、その後は家から出ちゃいけないの。巫女さんが、夜叉さまのお嫁さんになる為に、色々と儀式があるんだって」
その理由を不思議に思いつつも、真郷は納得したような素振りを見せた。



