こういう時は、教室までの道程をやけに遠く感じるものだ。

「いつの間にか、ナツと仲良くなっちゃったんだね。あの子、けっこう人見知りするのに」

どことなく嬉しそうな小夜子が、真郷の顔を覗き込んだ。

「うん。一昨日、ウチに来てくれたんだ……それで色々と」

「あ、そうだったんだ。ゴメンね、突然押し掛けちゃって。仔犬のこと気にしてたみたいで」

「そうみたいだね。元気になったんだよ……あ、そういえば」

真郷は借りていたものを思い出し、ゴソゴソと鞄を漁った。

「ごめん、これ借りたやつ。すぐ返せなくて……」

綺麗に洗われたスポーツタオルと、藍色の傘。

小夜子はにっこりと微笑んで受け取った。

「気にしないで。……こちらこそ、色々と迷惑掛けちゃったもの」