真郷は声の震えを抑える。
「一度帰って来ませんでしたか?」
再度、フミ子に問えば。
彼女はきょとんと瞬きをした。
「いいえ、一度もお戻りになりませんよ。お嬢さんがどうかなさったんですか?」
その問いに対して、真郷は首を振った。
「いえ、ごめんなさい、勘違いみたいです」
それだけ言うのがやっとだった。
おかしい。母が戻っていないなんて。
これでは辻褄が合わないではないか。
母でないとしたら、さっき喋っていたあの声は、一体誰なのだ?
フミ子の溌剌とした声ではない。
まして、祖母の嗄れた声でもない。
どう考えても、母以外には該当する人間が居ないのだ。
この、深見の家には。



