しかし、何か思うところがあるのか。
「ソレさ、学校で姉ちゃんに返せよ。そしたら、ついでに話とかできるだろ」
ニコリと八重歯を見せて、夏哉は玄関ではなく縁側へ向かった。
「次から遊びに来るときは、直接こっち来て良いだろ?」
「うん。いつでもどうぞ」
「サンキュ。それじゃ、また学校でな!」
手を振ると、夏哉は中庭を抜けていった。
風が去ったような、スッキリとした空気がその場に残る。
それから、真郷は部屋に残された食事に箸をつけ始める。
「──真郷」
襖の向こうから、母の頼りない声がした。
視線を向けたが、すぐに反らす。
「──何?」
ずず、と味噌汁を吸い上げる。もはや味が感じられない。
「今の子、学校のお友達?」
探るような声色に、苛々した。
「そうだけど、何」
淡々としていた。母とのやり取りはいつも不自然だ。
「どこに住んでる子?」
「知らないよ、そこまでは」
「そう……」
いつもの通り、もう終わるだろう脆い会話。真郷が息をついた時だった。



