東京に居た頃は、信用できる友達などいなかった。
嘘に塗り固められた偽りの自身しか知らない者ばかり。
けれど夏哉は。
夏哉だけは、どんなに隠しても真郷の全てを見透かしているような気がした。
「……オレの家もさ、結構色々あるんだ。片親だし、それで姉ちゃんも苦労してるから」
真郷を映したままの、夏哉の瞳が揺れる。
「だからさ、真郷がどんな奴か心配だったんだよ。今まで態度悪くてゴメン」
「──そんな、俺は平気だから。なんか羨ましいな、兄弟がいるの」
姉思いな夏哉に、自然と笑みが溢れる。
しばらくして、食事を用意したフミ子がやって来たので、真郷は空腹を思い出した。
「あれ?飯まだなの?」
「ああ、うん。ちょっと寝坊してさ」
「へぇ、真郷みたいなのでも寝坊なんてするんだな。……じゃ、俺もそろそろ帰るわ」
立ち上がろうとした夏哉を、真郷は引き留める。
「ちょっと待って。昨日借りた傘とタオル、返すよ」
「ああ、姉ちゃんのか」
あまり気にしていなかったのか、夏哉は言われるまで気付かなかったらしい。



