真郷の姿を認めると、仔犬は尻尾を振りながら足に擦り寄ってくる。
「はいはい。今お前のご飯やるからなー」
ドッグフードと一緒に入れられていた銀の器を取り出して、適量を盛る。
仔犬にそれを差し出してやると、嬉しそうに食べ始めた。
「おー良い食いっぷりだなぁ」
感心しながらその様子を観察していると、背後の戸がノックされた。
「真郷、お友達が来てるわよ」
薄い板越しに、母の声が響く。
「──友達?」
果たして、この村で自分に友達と呼べる人間がいただろうか。
思い当たる節がないので、真郷は戸惑った。
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