そんな想いとは裏腹に、真郷の口許は笑みを浮かべていた。
それはある種の防衛本能のような。
「ありがと」
あるいは、ただの道化なのかもしれないが。
そういった反応をされて、気分を害する者はいない。
母は、安堵したように笑う。
それを見届けて、真郷は踵を返そうとした。
「坊っちゃん」
呼び止めたのは、フミ子だ。
「後から坊っちゃんの部屋にお食事、運びますね」
「──うん。お願いします、フミ子さん」
どうやら他の皆はとっくに昼食を終えたようだ。
フミ子の気遣いを嬉しく感じつつ、真郷は自室へ戻った。
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