寝坊することなど滅多にないが、さすがに昨日は色々あって疲れたらしい。
とりあえず身仕度を済ませると、真郷は部屋を出た。
母屋に行けば、買い物袋を提げたフミ子が母と何か話しているようだった。
ちょうどこちらに気付いた母が手招きする。
「おはよう、真郷」
「おはようございます、坊っちゃん」
おはよう、と返す真郷に、フミ子は買い物袋を手渡した。やけにずっしりとした感触がある。
「フミ子さんが買い物に行くって言ったから、お願いしたの」
母の言葉に袋の中を覗くと、どうやら中身はドッグフードのようだった。
「ワンちゃんもお腹が減ってるんじゃない?」
優しげな笑みを向けられて、真郷は急に居心地が悪くなった。
母親としての優しさを向けられると、どうして良いものか分からなくなる。



