償いノ真夏─Lost Child─






畦道に、赤と青の花が二輪、咲いていた。

並んで歩いているだけで、なぜか妙に身体が硬くなる。

道幅が狭いせいで、時おり肩や腕が触れあう。

その度に、それらは真郷の心臓を跳ね上がらせた。


「深見くん、東京から来たんじゃあ、この村なんて退屈でしょう?」

「いや、そんな事ないよ。静かだし、空気は美味しいし」

「空気?」

「うん。あっちは排気ガスとかタバコとかでけっこう汚れてるから」


小夜子は感心したように何度も頷いていた。

その様子がなんだか幼く見え、真郷は微笑んだ。


「朝霧さん、この村から出たいの?」


そう質問すれば、彼女は目を丸くし、それから寂しそうに呟いた。


「出たいよ……。叶わないだろうけど……」


びゅう、と強い音を立てて風が吹いた。


「ごめん、今、何て……」

風に遮られた言葉は、結局真郷の耳には届かなかった。

「深見くん、見て!祠のとこ、あれナツじゃない?」