教室の中の雑踏がまばらになり始める。 気が付けば、時刻は五時を回っていた。 「……帰ろ」 誰にともなく呟いて、真郷は鞄を持つと教室を出た。 たまには雨に濡れるのも悪くない。 フミ子には多少怒られそうな気もするが、その時はその時だ。 玄関で靴を履き、いざ外へ出ようとした時。 「深見くん」 背後から声を掛けられ振り返ると、朝霧小夜子が立っていた。 「ねぇ、ナツ見なかった?」 「夏哉くん?見てないけど」 「そっかぁ……やっぱり帰っちゃったのかな」 小夜子は肩を落とすと、真郷を見た。