償いノ真夏─Lost Child─




夢を見た。

体内に入り込んだ蛇が、子宮でじっととぐろを巻いている。そうして、ときどき蠢く。

そして言うのだ。


「オカアサン──…」



目が覚めると、そこは見慣れた部屋だった。夏哉が横で寝息を立てていた。外はまだ暗い。


「ゆ……め……?」


夢と現実の境目で、小夜子は妙な違和感を感じた。その途端、急な吐き気に襲われ、布団を出るとトイレへ駆け込んだ。

「うぐっ……げほ……っ」

その奇妙な感覚に、嫌な予感がした。あの祭りの日以来、月のものが来ていない。小夜子はそっと、腹部に手を当てた。

「まさか……そんなの……」

おぞましい。おぞましい。
小夜子は鮮明にあの出来事を思い出した。

自分の中で吐き出された蛇の毒が、また新たな呪いを生んだ。

「姉さん……?」

全身の血の気が引いた。振り返ると、夏哉が青ざめた顔で立ち尽くしていた。

「まさか……」

その続きは、聞くまでもない。

小夜子はもう、堪えることができなかった。