そして、項目の最後にはあの言葉が綴られていた。
【忌子】いみこ
祭事を終えた巫女の呼び名。多くは祭りで精神に異常をきたす。祭りの際に妊娠した子供は堕胎するのが規則である。または、村の外で育てる。
──まさか。
夏哉の脳裏に、真郷の顔が浮かんだ。村人が言っていた深見のお嬢様が真郷の母ならば、彼女は忌子……つまり、真郷もまた、生まれながらにこの村の因果に囚われた犠牲者なのだ。
「真郷……オレ、どうしたらいい……?オレ一人じゃ……姉さんを守れない……」
あまにも絶望的な未来を前に、夏哉はただ、為すすべもなく立ち尽していた。



