部屋を覗いて戦慄する。
ベッドの上で絡まる裸体。
母と、見知らぬ男。男の腕には青い龍の刺青があった。
怒りにまかせて男に掴み掛った真郷の小さな体は無力で、男に殴られ宙に舞う。その後、目覚めると病院のベッドの上だった。
父も母も泣いていた。
──そして、それをきっかけに両親が離婚した。
「お父さんとお母さん、どっちと暮らしたい?」
その問いに〝父さん〟と答えれば、父は嬉しそうに微笑んで、それから悲しい顔をした。
「お前はまだ幼い。お父さんはいつも一緒にいてやることができない。だから、お前が16歳になったら、一緒に暮らそう」
恐らく、父がこう言った理由はそれだけではない。母の浮気相手は暴力団員だ。
真郷を見るあの暗い瞳は、人を殺したことがある目だった。
だから、何らかの報復があってもおかしくない。暫く夜叉淵村に身を隠したほうが安全だろうと、父なりの配慮だったのだ。



