そんな小夜子の心情を知らない夏哉は、「そうだよな」と笑って言う。 ずぶずぶと音を立てて、胸の小さな亀裂に杭が沈んでいく気がした。 小夜子は真郷を見たが、彼はまだ不安げな偽りの笑顔を貼り付けたままだ。 「ね、ナツ。そろそろ授業始まっちゃうよ?」 「あ、ほんとだ。じゃ、二人ともまた後でな」 夏哉が去ると、小夜子は真郷に向きなおった。どうしても彼の口から訊きたかった。 本当の言葉で。 本当の思いを。 そして否定して欲しかった。