「ナツ……これを見て……」
するりと包帯を外せば、小夜子の白い首には青黒い蛇の鱗模様がくっきりと浮かび上がっていた。
夏哉は仰天し、大きく目を見開く。
「それ……まさか」
いい募る夏哉に、小夜子はこくんと頷いた。
「そう……オシルシ。私、選ばれたみたいなの……」
「選ばれたって、そんな!オシルシなんて迷信じゃないのかよ!?」
「実際に身体に現れたものを、どうやったら迷信と思えるの?ねぇ、ナツ、聞いて……」
夏哉の手首を掴んで引き寄せると、小夜子は静かに口を開いた。その表情は、いつになく落ち着いている。
「私が巫女になったら、きっと、此処での生活も楽になるわ。そうしたらお父さんだって落ち着くはずよ。私はこの家に居られなくなるけど、それも御夜叉祭が終われば帰って来られるもの。だからナツ、私、巫女になるわ」
「姉さん……!」
小夜子の真剣な瞳に圧されたが、すぐに夏哉は思い出していた。……真郷と目にした、あの忌まわしいものを。
不気味な笑い声は、今になっても生々しく蘇る。ぞく、と背筋に悪寒が走った。
「だ……駄目だ……!」
考えるより先に、夏哉はそう口にしていた。



