「どうしてオレはいつも姉さんを守れない……!」
力があれば、親の庇護がなくても生きていける大人だったら。
夏哉は悔しげにそう言った。
小夜子はそんな夏哉を見つめながら、自身の非力を嘆いた。
そして、ふと思う。
自分が夜叉の花嫁となれば、祭りで巫女として舞えば、少しは村での父の待遇も良くなるかもしれない。
それに、自分が暴力を振るわれる心配がなければ夏哉もこんなに悲しませずに済むはずだ。
……真郷にも心配を掛けずに済む。
全て自分だけが我慢すれば、それで皆が楽になるのなら。
小夜子はそっと、自分の首に手を当てた。



