ひゅっ。
流れ込んだ酸素に喉が鳴った。
ゆっくりと目を開ければ、そこには心配そうな表情の夏哉がいた。夏哉はしっかりと小夜子の左手を握っている。
「姉さん……!良かった、気が付いて」
「ナツ……私……」
「親父に殴られて気を失ってたんだ。──ゴメン、一緒に居てやれなくて」
「ナツのせいじゃ、ないよ……。ごめんね、心配掛けちゃったね……」
手を握り返すと、夏哉は首を振った。そして俯くと肩を震わせた。
「畜生……!」
押し殺すような夏哉の声が、小夜子の耳に刺さる。
「ナツ、どうし……」
ぽつ、ぽつ、と頬に冷たい雫が降ってくる。それが夏哉の涙だと知るまで、時間は掛からなかった。



