しかし、小夜子は家に近付くにつれて恐ろしくなってきた。もし真郷が父の姿を見たらどう思うのだろう。もう、庭の手入れもろくにしていない。酒瓶だらけの家を見られたら……。
小夜子の不安が大きくなるにつれ、家も近付いてくる。もう庭先だ。思わず小夜子は真郷の顔色を窺った。
「もう、ここで大丈夫だから──」
それ以外に、何も言えなかった。
真郷はまた、悲しそうな顔をしていたのだ。
そう告げて、ゆっくりと手を離したその瞬間。
「小夜子ォ!おせぇぞぉ!どこまで買い物行ってやがんだぁ!?」
鋭い怒号。玄関の戸を乱暴に開けて現れたのは父だった。酒がなくなって大層不機嫌らしく、ずんずんとこちらに向かってくる。
小夜子は硬直した。



