「真郷くんは、平気?──私たちと居て、嫌な思い……してない?」
こんなことを訊いても、余計に虚しくなるだけなのに。そう後悔しても間に合わない。
真郷の顔を見る勇気はなかった。
「──何で、そんなこと言うんだよ」
怒っているような、悲しんでいるような、そんな低い声だった。恐る恐る、小夜子は顔を上げた。
そこには、今にも泣き出しそうな表情の真郷がいた。こんな顔は、まだ幼かった頃にも見た。
あれは、そう、初めて出会った時だ。
「嫌な思いなんて、一度もしたことないよ。何で、そんなふうに思うんだよ」
また、真郷を困らせてしまった。
「だって……だって……!」
自分でもどうしようもないのだ。真郷を試すような事などしたくないのに。
それは小夜子の持つ劣等感や孤独から来る不安によるものだった。



