そんなことを考えながら、ちょうど村の境までたどり着いた時、自分の名を呼ぶ声がした。
行く先に、見慣れた姿があった。
「小夜子!」
手を振っているのは、真郷だ。彼は駆け寄ってくると、小夜子の両手にある荷物を受け取って軽々と持ち上げた。
「持つよ。一人じゃ大変だろ?」
屈託なく笑う真郷が眩しく見えた。彼もまた、小夜子とは違う。小夜子は知っていた。彼が、自分たちと居るせいで他の子供たちから避けられていることも。
それでも、いつも微笑んでくれる。
傍に居てくれる。
そんな真郷のことを、小夜子はどうしようもないほど好きだった。
だからこそ、不安になる。真郷は優しいから、迷惑だと言えないだけなのかもしれない。そんな不安から、小夜子は余計なことだとわかっていても、訊かずにはいられなかった。



