──小夜子は、くしゃくしゃの封筒を胸に当てて握り締める。 「真郷君の嘘つき……」 あの約束から数年、真郷が選んだ場所は結局、小夜子の傍ではなかった。 東京に帰ると言った真郷を、愛しい以上に憎くも思った。 「今度は私が約束……守れないかもしれないんだよ……」 封筒は、真郷が去り際に小夜子に渡していったものだ。中には一通の手紙が入っていた。 小夜子へ、と綴るのは真郷らしい丁寧な文字だ。